障害児支援の報酬改定、現場はどう備える?「書類の山」をDXで少し低くする方法
① 厚労省が障害児支援をテーマに、令和9年度の障害福祉報酬改定に向けた検討を開始しました。
② 制度の結論はまだ先。今できるのは、記録・請求・連絡の流れを見える化することです。
③ 書類の山は一気に消えませんが、まず“同じ内容を何回書いているか”を数えると、DXの入口が見えます。
福祉の現場で「報酬改定」と聞くと、書類の山がこちらを見ている気がしませんか。山は黙っていますが、締切だけは元気です。
厚生労働省は2026年10月5日、障害福祉報酬改定検討チームの第65回会合を開催し、令和9年度の改定に向けて障害児支援を議題にしました。今回の会合は検討段階であり、具体的な改定内容が決定したという発表ではありません。
ニュースのポイント:障害児支援のこれからを検討中
厚労省の公開情報では、第65回会合の議題は「令和9年度障害福祉報酬改定に向けて(障害児支援)」です。9月28日の第64回会合では就労系サービス、9月24日の第63回会合では訪問系サービスが扱われており、サービス分野ごとに論点を整理している段階だと分かります。
現時点で確認できるのは「障害児支援について検討が行われている」という事実です。改定率や新しい要件を先取りして断定せず、公式資料の更新を追いながら、自事業所の業務を整えておくのが安全です。
福祉現場への影響:制度対応は“記録の流れ”から
放課後等デイサービスや児童発達支援では、支援記録、個別支援計画、保護者連絡、送迎、請求などが日々つながっています。どこか一つの入力が遅れると、別の表へ転記し、さらに別の人が確認することになりがちです。
まず見るべきは新しいツールではなく、同じ情報を何回入力しているかです。利用児童の氏名や支援内容を外部の未承認AIへ入力するのではなく、匿名化した項目名や業務時間だけを使って、重複作業を洗い出します。
- 記録・申し送り・請求で重複する項目を一覧にする
- 保護者連絡の定型文を、確認者つきのテンプレートにする
- 送迎変更が起きたときの連絡順を一枚にまとめる
AIや自動化に任せない領域も明確にします。個別支援計画、虐待や安全上のリスク、本人の意思、医療・服薬、緊急時の判断は、専門職と管理者が責任を持って行う領域です。
教育現場への影響:子どもの情報は“便利だから入力”しない
障害児支援と学校、学習支援、放課後の居場所は、保護者や学校との情報連携でつながっています。連絡文の下書きや会議メモの整理はデジタル化しやすい一方、成長の見立て、合理的配慮、いじめや不登校、安全に関わる判断は人が背景を理解して行います。
「入力してよい情報」「匿名化する情報」「入力しない情報」を先に決めることが、教育と福祉の共通ルールです。児童生徒の氏名、診断、家庭状況、写真、学習記録は、本人・保護者への説明、目的、保存先、削除方法を確認してから扱います。
中小企業DX:報酬改定に備える費用の見方
制度対応をきっかけにシステムを見直す場合、月額料金だけで比較すると後から困ります。初期設定、既存データの整理、職員研修、問い合わせ対応、権限管理、バックアップ、解約時のデータ返却までを費用と時間に含めます。
人手不足の現場では、いきなり全員に新操作を覚えてもらうより、1つの業務を2〜3人で2週間試す方が安全です。削減時間だけでなく、差し戻し・確認待ち・入力ミスが減ったかを記録すると、導入効果を説明しやすくなります。
個人情報・著作権・誤情報のチェック
- 支援記録や診断名を、利用条件が不明なAIへ入力しない
- AIが作った要約・請求根拠・保護者向け文面を人が確認する
- 教材、写真、イラストの著作権と利用許諾を確認する
- アカウント権限、端末紛失、退職者のアクセス停止を点検する
今日からできるヤサロジ式5分点検
- 先週、同じ内容を二度以上書いた作業を一つ挙げる。
- その作業に関わる人と確認タイミングを紙に書く。
- 個人情報を使わないテストデータで、入力を一回減らせるか試す。
- 便利さだけでなく、確認漏れや新しい負担も記録する。
「DXを始める」と言うと大きく聞こえますが、最初は5分の点検で十分です。書類の山をいきなり富士山から丘にするのは難しくても、まず一枚減らすことはできます。
ヤサシサロジックの見解
報酬改定の議論は、制度の文章を読むだけでなく、現場の記録と支援が無理なく続くかを見直す機会です。ヤサシサロジックは、ツールを増やす前に「誰が、いつ、何を見て、どこへ記録するか」を整理することが、福祉・教育DXの近道だと考えます。
制度の変更に追いかけられるのではなく、変更が来ても慌てにくい業務の流れを少しずつ作る。これが、やさしさを仕組みに変える第一歩です。